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05 18
2014

男声合唱

歌う人のためではなく、聴く人のための男声合唱ガイド9 ロシアの宗教音楽1

ロシア北部正教会聖堂の聖歌集
★★★
Orthodox Shrines of the Russian North
Orthodox Shrines of the Russian North
MP3アルバム
イーゴリ・ウシャコフ指揮
ヴァラーム声楽文化教会男声合唱団

 ロシアの合唱というと、年配の方の中には、ドン・コサック合唱団や赤軍合唱団といった男声合唱団の名前を思い浮かべる人もいるだろう。ロシアがソビエト連邦と呼ばれていた頃、彼らはレコードや来日演奏を通して広く知られていた。

 彼の国の合唱といえば何をおいても、バスの重低音である。たしかにテノールの高音も相当の迫力がある。でも、バスの重厚さは日本の合唱団にはちょっと求めるべくもない。ロシアには、生まれつき低い声に恵まれた男が大勢いる。ヘ音記号の下に2本、時には3本の下線を引くような音域を彼らはいとも簡単に出してしまうのだ。

 では、日本人も練習すれば、超低音を軽々と出せるようになるのだろうか。

 ネットには、低音の出し方について書かれているサイトが数多くある。声の専門家であるボイストレーナーの見解を聞いてみよう。

  声帯の長さや重さなどは、人それぞれ決まっています。長さをさらに長くすることは
  出来ませんので、出せる低音には限界があります。

  http://www.voicetraining.jp/vocal_training/02_02.html

  低音の限界は生まれつき決まっています。
  http://music.geocities.jp/daisukidaisakuvoice/12index.html

 ……低音については、残念ながらプロでも、努力して下に伸ばせるといった領域ではないらしい。

 超低音が出せるというのはどういうメリットがあるのだろうか。一番は、単純に「すごい」と褒めてもらえるということである。テノール歌手が「高いド」の音(いわゆるハイC)を出したり(1)、ソプラノ歌手がモーツァルトの「夜の女王のアリア」(オペラ《魔笛》)を歌っている時に私たちが感じる高揚感。それと似たものを、ロシアのバスコーラスの「低いド」(ローC)から感じることができる。このような低音を、バス歌手から聴くのは難しい。理由は、演奏会で聴衆に訴えられるレベルの声量を出すことがたいへん難しいからだ(リヒャルト・シュトラウス《ばらの騎士》のオックスのような存在は例外である)。

 一方、女声において超高音を出すには、ソロと合唱とでどちらが有利なのだろうか。だんぜん前者である。「夜の女王のアリア」のようなあんな高い音は合唱にはとても無理だ。以上をまとめると、声楽における超高音はソプラノソロが、超低音はバスコーラスがそれぞれ有利ということになる。ト音記号の上に3~4本引いた音で高らかに歌うソプラノソロと、逆にヘ音記号の下に3~4本引いた音を野太く歌うバスコーラスを一緒に聴けたらどんなにいいだろうか(ちなみに最高音と最低音の差は4オクターブ半から5オクターブほどになる)。そんな合唱曲を誰かが書いていそうな気がする。

(1)本文には関係がないけれども、日本で一番ハイCにこだわりのあるオペラファンの著書を紹介しておきたい。住田誠蔵『魅惑のハイCテノール大辞典』(文芸社)。

   *  *  *

 今回扱うのがロシアの「宗教音楽」だということを忘れそうになった。でも、忘れてもいいやという気持ちが自分の中にある。オペラのストーリーを知らなくても美しいメロディーに感動することはできるし、ソロの高音に心を惹きつけられることもできるのだ。そのような感じで接していただければ十分だと思う。今回と次回でとりあげる2枚は以上の観点から選択した。どちらも、のっけからいきなり低音の世界に引きずり込まれる。

 三ツ星とした『ロシア北部正教会聖堂の聖歌集』は、単旋律のもの、ハーモニーがつけられたものがバランス良く配置されており、ロシアの男声合唱の入門編として最適である。なお、単旋律といっても、バスの旋律にテノールが1オクターブか2オクターブ上で飾り付けを行っている。テノールは主役ではなく、あくまでバスの引き立て役なのだ。しかしながら、彼らのおかげでバスの重厚さがより際立つことになる。特に10曲目が絶妙で、恐怖感を感じるぐらいだ。なお、当盤のバスはヘ音記号の下線3本の領域まで降りる(2曲目と17曲目)。

 ぜひ、CDを2回聴くことをおすすめしたい。1回目は普段どおりに、2回目は低音の動きを追っかけながら聴いてみよう。バスの存在感が強すぎて1回目から低音に気をとられそうになるかもしれないが、そうなった人はぜひとられてほしい。当盤に限らず、2パート以上の男声合唱を聴く際は上のような聴き方をやってみてほしい。同じ演奏でもずいぶん違った感じに聞こえることが多い。

 今回紹介したやり方は、オーケストラやピアノ曲、あるいは洋楽やJ-POPに接する際にも役に立つと思う。よろしければさっそく、あなたの所有しているCDやDVDでお試しください。
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Author:scaffale
「日本詩人愛唱歌集」「校歌の花束」の管理人

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