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04 28
2014

合唱全般

合唱をしている人々は本を読まない(鑑賞者向けの合唱曲ガイドが出版されない理由を考える1)

 以前に書いたとおり、「なぜ、合唱の分野には聴き手のためのガイドブックがないのだろうか」という疑問から、「歌う人のためではなく、聴く人のための男声合唱ガイド101」というものを作っています。

 手引きがない理由を考えるのは簡単です。すなわち、本を出しても売れないから。少なくとも出版社サイドにはそう考えられているはずです(でなければとっくに何冊も出版されていたでしょう)。では、担い手も聴き手も合唱より少ないはずの吹奏楽、古楽、現代音楽にこの種の本が存在するのはなぜでしょうか。

  よく、ちまたで、合唱をしている人々は本も読まないし、音楽会に行く人も
  意外に少ないといわれる(1)


 これは当時(1988年)、全日本合唱連盟の理事長をしていた石井歓の発言です。「ちまた」で言われるほどに多くの人が同意をしていたであろうことが注目されます。この見解に従うと、音楽会に行く人が少ない、つまり良い演奏というものに興味がないわけだし、彼らは本を読まないんだから、「名曲・名演奏を集めた本」は売れるはずがないのです。そして、吹奏楽や古楽・現代音楽の本が先に出たということは、合唱はそれらよりも売れないとみなされたということです。

 合唱をやっている人は、クラシック音楽の他のジャンルに接する人に比べて読書量が少ないのでしょうか。吹奏楽のガイドブックが何冊も出たのは、吹奏楽界の人たちが読書家だからでしょうか。たしかに、吹奏楽の雑誌について月刊誌が成立しているのに、合唱の雑誌についてはごく最近まで季刊誌『ハーモニー』しかなかった。しかもこの雑誌は全日本合唱連盟の機関誌であり、一般の書店では販売していない。商業ベースの雑誌は長らく存在していませんでした(2)

(1)『ハーモニー』(全日本合唱連盟)66号「巻頭言」p.1
(2)かつて、『合唱界』(合唱界出版社)や『合唱サークル』(音楽之友社)という月刊誌が出版されていたが、いずれも休刊となっている。また、2002~2009年にかけて『合唱表現』(東京電化)という季刊誌があった。

 「合唱界の人は本を読まない」という通念が正しいかどうかは分かりません。誰も調べたことはないでしょう(この文章を読んで、「卒業論文の題材にしよう」という学生さんがいたら望外の喜びです)。その正否はともかく、出版界にはそう思われているであろうということが重要なのです。「いや、オレは合唱団を3つ掛け持ちしている筋金入りの合唱人だが、ミステリーを毎年200冊以上読んでいるぞ」という人もいるでしょう。でも、そのような人が合唱の本に食いついてくれないということが重要なのです。

 出版社の努力が足りないのでしょうか。音楽出版社は、音楽を紹介することは上手なのかもしれないけれど、自社の本の売り込みについては苦手なのかもしれない。新潮社の「新潮文庫の100冊」といったような取り組みがないし、「この音楽書を読め!」みたいな本はあまり見かけないですよね(3)

(3)音楽書籍を紹介する本としては、片山杜秀『クラシック迷宮図書館』『続・クラシック迷宮図書館』(アルテスパブリッシング)がある。前者のあとがきでこの手の本はあまり見かけないといったことを書いていた。

 努力が足りないかどうかの当否についても、ここではこれ以上突っ込まないことにします。オペラに目を向けましょう。合唱よりは演奏人口は当然少ない。演奏会の数も多くないのだから、聴衆の数もおそらく合唱よりは少ないと思います。にもかかわらず、オペラのガイドブックはたくさんある。オペラを支える層には読書が好きな人が多いのかもしれません。『グランド・オペラ』(音楽之友社)という雑誌もありました(現在は不定期刊行のムックへと移行)。

 少数派だけれども本が売れるオペラと、多数派だけれども本が売れない合唱。マーケティングでいえば、買うことがわかっている少数派の「顕在層」と、買ってくれない多数派の「無関心層」のようなものです。でも、合唱に関わるすべての人が無関心層というわけではない。「潜在層」がそれなりにはいるはずです。顕在層にアプローチしながら、潜在層に訴えかけるものを作れないか? 誰かがこう考えました。そして、彼のアイデアは、オペラと合唱の2つを扱う、画期的な雑誌へとつながったのです。

 その雑誌は2013年に創刊されました。『Hanna』(ハンナ)です。表紙に「うたと合唱とオペラ」とある通り、「うた」に関するさまざまなもの――歌曲やヴォーカルグループ、初音ミクなど――を横断的に扱いつつ、オペラと合唱という2大ジャンルで成功する雑誌を作ろうという冒険的な試みだったのです。

ショパン増刊 Hanna (ハンナ) 2014年 05月号
ショパン増刊 Hanna (ハンナ) 2014年 05月号

 合唱とオペラがいかに重要視されているかは、創刊号の構成でもわかります。全84ページの中で、合唱に関するページが29ページ(巻末楽譜を含む)。オペラに関するものが22ページです。残り33ページの内訳を見てみましょう。

  広告 7ページ(ラテーザがお届けする夏のオペラツワー2013など)
  目次 2ページ
  コンサートの紹介 9ページ(コンサート&インフォメーション:2ページ、コンサートガイドINDEX:7ページ)
  特集 うたの魅力、うたの魔力 5ページ
  ああ、冬の旅(岡村喬生) 2ページ
  北中正和のワールドミュージック散歩 1ページ
  ル・ヴェルヴェッツ 1ページ
  『初音ミク』がすごい! 1ページ
  Intermezzo 2ページ(コンサートや曲・団体の紹介記事だが、うち1ページはすべてが合唱関連)
  声に効くレシピ(荒井香織) 1ページ
  音程のずれがひと目でわかる!(田代直子) 1ページ
  お便りをお寄せ下さい/編集後記 1ページ


 結果ですが、売れたようです。3号雑誌にならなくてよかった。私も毎号買っています。

 次回は『Hanna』におけるCD紹介の現状について書きます。
 
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